安楽死(参考文献、資料)
安楽死の記事をまとめる際に使用した参考文献と資料について掲載します。もし、本記事において不備や間違いがあった場合には全て私の責任とし、修正させていただきます。
安楽死を遂げるまで【著者:宮下洋一】
宮下洋一氏は1976年、長野県生まれ。ジャーナリスト。18歳で単身アメリカに渡り、ウエストバージニア州立大学外国語学部を卒業。その後、スペイン・バルセロナ大学大学院で国際修士、同大学院コロンビア・ジャーナリズム・スクールで、ジャーナリズム修士。フランス語、スペイン語、英語、ポルトガル語、カタラン語を話す。フランスやスペイン語を拠点としながら世界各国を取材。主な著書に、小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞した『卵子探しています 世界の不妊・生殖医療現場を訪ねて』『外人部隊の日本兵』など。
宮下氏の安楽死取材を時系列に沿って書かれているので、宮下氏と共に理解を深めていけるような本になっている。著者の疑問は読者の疑問と合致するところが多いはずであり、その答えを探る為には非常に参考になる一冊である。実際に安楽死を遂げる方々や医師などに取材され、その家族の後追い取材もされている。安楽死が認められている国でさえ、非常に多くの問題を抱えており、日本では認められていない為の問題もある。宗教的な問題から家族の存在によって安楽死の決断に違いがあるのではないかという実際が書かれている。個人から国と多角的に捉えて書かれており、安楽死が必要かどうかの議論さえ起こらない日本で、正しい正しくない議論の前に知識として必要な情報を得る為の重要な一冊である。
終末期患者からの3つのメッセージ【著者:大津秀一】
1976年生まれ。茨城県出身。岐阜大学医学部卒業。緩和医療医。日本消化器病学会専門医、日本内科学会認定内科医、日本尊厳死協会リビングウィル(LW)受容協力医師、2006年度笹川医学医療研究財団ホスピス緩和ケアドクター養成コース修了。内科専門研修後、日本最年少のホスピス医(当時)として日本バプテスト病院ホスピスに勤務。在宅療養支援診療所を経て、2010年より東邦大学医療センター大森病院緩和ケアセンターに所属。
安楽死と直接関わる内容ではないが、終末期の苦痛や精神的不安について知る為に参考にさせていただいた。日本では安楽死(積極的安楽死)を議論する事自体、日本では表立って行われていないが、尊厳死については日本尊厳死協会が情報発信とリビングウィルを推奨している。本書は延命治療をせず尊厳死する為には?という内容ではなく、後悔少なき死を迎える為に、終末期だけでなく、普段からどのような生き方をすれば良いのかを医師として終末期患者を看取ってきた著者の視点で書かれている。死を身近に感じない時代に死を議論したり考える機会が少ない中で、自分が死ぬ時を想像しながら読んでみても良いのではないでしょうか。
終(つい)の選択【著者:田中美穂 児玉聡】
【田中美穂】1972年生まれ。1991年女子学院高校卒業、1995年早稲田大学卒業。北海道新聞記者、朝日新聞記者などを経て、2012年東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻専門職学位課程修了。日本医師会総合政策研究機構主任研究員。【児玉聡】1974年生まれ。2002年京都大学大学院文学研究科博士課程研究指導認定退学、博士(文学、2006年)。京都大学大学院文学研究科准教授。著書に「功利と直感」(勁草書房)、「功利主義入門」(ちくま新書)他。
膨大なデータと法律的観点から多角的に安楽死についての問題点を取り上げている。積極的安楽死や生命維持治療(延命治療と同義だが、本書では中立的な立場からこの用語を用いている)の中止をめぐる患者、家族、医師の関係と医師の免責について、また終末期等の用語の明確化がなされていない問題点なども取り上げている。日本は終末期の治療に関する議論を活発にしなければならないのだと感じた。本書では「看取りケア」「緩和ケア」についても説明があり、安楽死を考える以前に知っておいた方が良い知識が書かれている。今後、日本でも安楽死の議論は湧き上がると予想されるが、日本の終末期医療の現状をまず本書で知っていただきたい。
人生の最終段階における医療・ケアの 決定プロセスに関するガイドライン
人生の最終段階における医療・ケアの 決定プロセスに関するガイドライン
このブログでも紹介した医師が延命治療中止に伴い殺人罪に問われた事件や、殺人罪に問われずとも問題になった事件があった。その後に厚生労働省から出されたガイドラインです。目を通していただければお分かりになるかと思いますが、事前の話合い、文書化、その繰り返しが必要と念を押すかのような表現がされています。もちろん非常に重要な点で、私も多くの方がそのような話し合いを家族間で行う事が当たり前になれば良いと思っています。しかし、現場の医師たちにとって、そのような約束された患者だけを診る訳ではないのは説明の必要がない事だと思います。現場で働く医療従事者、その中でも決定権があり、責任を問われる医師たちにとってのガイドラインとしては不十分であり、延命治療を中止するに足りる要件などを明確化したガイドラインが必要であると思う。明確にされていない中で判断し続ける医師の悩みの解決と共に、遺族の安心と納得のためにも更に踏み込んだ内容のものが必要なはずだ。