選挙っていつの時代からやってるの?

近年、日本の衆議院選挙投票率は50%台と昭和時代に比べればかなり低下しています。参議院選挙投票率に至っては40%台に落ちることもあります。投票率が低いのは平和だから?教育の問題?メディアの問題?答えを導き出すのは難しいので、まずは選挙とはいつからあり、それはどういったものだったのかを知り、今の時代を見直してみましょう。

投票率は低下している?

マー君
マー君

ディアボロ先生!選挙の投票率って低くなってきてるし、政治離れとか言われてるけど、昔は投票率って高かったの?

下のグラフを見たら分かる通り、昭和33年の衆議院議員総選挙を投票率のピークである76.99%として、そこから上下しながらも低下してきている。平成26年は最低の52.66%まで下がっているね。

ディアボロ先生
ディアボロ先生
出典:総務省ホームページ
マー君
マー君

本当に下がってきているんだね!確かに昔の投票率って高かったんだね!これだから政治離れとか言われるようになるんだね!ちなみに、参議院はどうなの?前に教えてもらった衆議院の優越(国会ってを何するところ?の記事中)があるから、どうしても参議院の方が投票率って低くなりそうだけど・・・。

理由は他にもあるかもしれないけど、結果はマー君の言う通り、参議院議員選挙の方が投票率が低い傾向にあるよ。昭和55年の74.54%をピークとしてこちらも投票率は減少傾向にある。この昭和55年は衆参同日選挙だった為に投票率が高くなったと考えられる。ちなみに平成7年では44.52%と近年では最低を記録しているよ。

ディアボロ先生
ディアボロ先生
出典:総務省ホームページ
マー君
マー君

やっぱり参議院の選挙も減少傾向なんだね!ところでディアボロ先生!この日本の選挙っていつの時代からやってるの?江戸時代とか僕のイメージでは選挙なんかやってなさそうなんだけど・・・。

江戸時代の選挙は役人選挙

江戸時代にも選挙はあったんだけど、これは村役人や町役人を選ぶものだったようだよ。時代は※寛文でかなり昔から投票するという仕組みがあったようだね。

ディアボロ先生
ディアボロ先生

※寛文(かんぶん)・・・日本の元号。1661年から1673年までの期間。天皇は後西天皇、霊元天皇で江戸幕府の将軍は徳川家綱の時代。

江戸時代では村役人や町役人の事を名主(なぬし)と呼んでいたが、これは関東での呼び方で、関西では庄屋(しょうや)と呼ばれていた。

マー君
マー君

役人の選挙があったんだね!じゃあ、今みたいな政治家を選ぶような選挙っていつから始まったの?

衆議院議員選挙法公布は明治22年(1889年)

1867年に幕府の徳川慶喜が朝廷に政権を返し(大政奉還)、江戸幕府が倒壊し、明治になったのが1868年。1881年に伊藤博文が国民に国会を開く約束をし、その後ヨーロッパに渡って憲法を研究した。そこで、ドイツは皇帝を君主として政府がそのもとに力を持っていた。その構造が日本に似ている事から、ドイツの憲法を参考にして大日本帝国憲法を作ろうとした。

ディアボロ先生
ディアボロ先生
マー君
マー君

日本だったら天皇と政府の関係みたいだって事だね!

そうだね。1867年に薩摩藩や長州藩は、明治天皇の名で王政復古の大号令を出させた。その形こそドイツの国の統治の仕方と似ていた訳だね。そして、1889年に大日本帝国憲法は天皇から国民に与える形で発布(はっぷ)された。この憲法の中に国会や選挙についての定めが記載されたいた。

ディアボロ先生
ディアボロ先生

王政復古の大号令・・・江戸幕府を廃し天皇親政を実現した政変のこと。

発布(はっぷ)・・・法律や憲法を世の中に広く知らせること。

マー君
マー君

じゃあ大日本帝国憲法が出来でから選挙が行われたんだね!

大日本帝国憲法が発布された同年に議員法、衆議院議員選挙法が公布された。翌年の1890年(明治23年)に第一回衆議院議員総選挙が実施されたんだ。

ディアボロ先生
ディアボロ先生
マー君
マー君

日本で政治家を選ぶ選挙は1890年だったのか〜!

投票出来るのは国民の1.1%だけ!?

ただし、現在の日本の選挙と大きく違うのは投票出来る人は国民の1.1%しかいなかったんだ。

ディアボロ先生
ディアボロ先生
マー君
マー君

今の投票率とか比べものにならないくらい少ない!どうしてそんなに少ないの?

当時の選挙権がある人は「満25歳以上、直接国税15円以上を納める男子」だけに限られていたからなんだ。

ディアボロ先生
ディアボロ先生
マー君
マー君

女の人に選挙権なかったの!?

女性が参政権を得たのは1946年だからね。いわゆる戦後だね。それまでずっと選挙に参加出来なかったんだよ。戦後初めての衆議院議員総選挙が行われたのが1946年の4月10日。この日、約1,380万人の女性が初めて投票して39名の女性国会議員が誕生したんだよ。

ディアボロ先生
ディアボロ先生
マー君
マー君

そうなんだ〜!そう考えたら今はまだ男女同権が進んでいる方なんだね〜。ところで、直接国税15円って今のお金で言うとどれくらいなの?そもそも直接国税って何?

明治時代の直接国税というのはそのほとんどが農民の地租(現代の所得税に相当)だったから、多くの人は投票権がなかった。そして、当時の15円は現在の60万円から70万円程度と言われているけど、当時の国の予算が約1億円だったのに対して、2022年の一般会計歳出は100兆円を超えている。貨幣価値の今と昔を単純に比べることはできないかもしれないね。

ディアボロ先生
ディアボロ先生

地租(ちそ)・・・土地に対して課す租税のこと。

マー君
マー君

なるほどな〜!簡単に言えば、お金持ちの男性にしか投票権がなかったってことだね!

そう言えるかもしれないね。それから見直しされ、2度見直しされ、最終的に満25歳以上の全ての男子に選挙権が与えられた。

ディアボロ先生
ディアボロ先生

補足:直接国税を納めていた農民たちも、豊作の時もあれば凶作の時もあり、土地に対しての税だったため税を納めるのが厳しい年はたくさんあったようだ。よって農民一揆が多発した。

衆議院議員選挙法改正

1900年(明治33年)衆議院議員選挙法改正「満25歳以上、直接国税10円以上を納める男子」

1919年(大正8年)衆議院議員選挙法改正「満25歳以上、直接国税3円以上を納める男子」

1925年(大正14年)衆議院議員選挙法改正「満25歳以上のすべての男子」

マー君
マー君

税金をいくら納めてるかが必要な時代は、お金持ちしか国民として認められてないみたいで嫌だね。

そういう意味では、女性はそもそも参政権がなかった点について言えば、とても今では考えられない法律だね。

ディアボロ先生
ディアボロ先生
マー君
マー君

衆議院の選挙は1890年が初めだって分かったんだけど、参議院はいつなの?

参議院成立は戦後

参議院が出来たのは戦後の事で、選挙が初めて行われたのは、1947(昭和22)年4月20日だよ。

ディアボロ先生
ディアボロ先生
マー君
マー君

え〜!日本ってもともと二院制じゃなかったの?

二院制(にいんせい)・・・国会が、衆議院と参議院のように二つの合議体によって構成される制度。両院制とも言う。

もともと二院制だけど、参議院ではなく貴族院というものだったんだ。貴族院は世襲の貴族や高官などによって構成される議院の事で、日本では皇族議員、華族議員、勅任議員によって組織されていた。

ディアボロ先生
ディアボロ先生

世襲(せしゅう)・・・その家の地位、財産、職業などを子孫が代々継いでいくこと。

華族(かぞく)・・・明治以降の特権的貴族層を主としていう。

勅任(ちょくにん)・・・勅旨によって官職に任ぜられること。 旧憲法のもとで、勅命によって高等官二等以上の官に任ぜられること。

勅任議員(ちょくにんぎいん)・・・勅選議員と呼ばれる国家に勲功があり、または学識ある満30歳以上の男子で、特に勅任された者。それに加え、帝国学士院会員議員と多額納税者議員の総称。

マー君
マー君

今の民主主義とは違うね〜。

戦後となる1947年に、大日本帝国憲法の改正による日本国憲法の施行により、貴族院と華族制度は正式に廃止された。参議院はこの貴族院廃止に伴い、二院制を維持する為に設置されたんだ。

ディアボロ先生
ディアボロ先生
マー君
マー君

二院制の重要性は以前の記事で勉強したから分かるよ!そういえば、大日本帝国憲法はドイツの憲法を参考にしたけど、この二院制ってどこかの国を手本にしたの?

日本が手本にしたのはイギリスの議会制度だね。

ディアボロ先生
ディアボロ先生
マー君
マー君

じゃあ選挙制度もイギリスを手本にしたの?

選挙制度に関しては、その国ごとの地理的条件や国内情勢の違いが大きい為、どこかの国の選挙制度をそのまま利用することは出来なかった。日本では明治以前の藩(はん)という江戸時代に将軍から石高1万石以上の土地をあてがわれた大名の支配領域があって、廃藩置県によって藩自体はなくなったけど、その影響力は依然強かった。それをどうするかという課題もあったんだ。

ディアボロ先生
ディアボロ先生

石高(こくだか)・・・米穀(べいこく)の数量。

廃藩置県(はいはんちけん)・・・1871年(明治4年)7月、全国261あった藩を廃止して、「府」と「県」を置いた政治改革。それまでの地方分権政治から中央集権的統一国家となり、明治政府の方針を全国に伝えやすくなった。

マー君
マー君

憲法はドイツ。議会制度はイギリス。選挙制度は日本独自に試行錯誤しながら作ったんだね!

投票を義務化してはいけない?

マー君
マー君

ディアボロ先生!投票率が低いってよく言われるけど、じゃあ投票を義務にするとかはダメなの?

実際に投票を義務化している国はあるよ。シンガポールやオーストラリアは投票を義務化していて、どちらも毎回投票率は90%を超えているんだ。そして、どちらも然るべき理由なく投票に行かなかったら罰金を支払わなければならない。

ディアボロ先生
ディアボロ先生
マー君
マー君

そうなんだ!じゃあ日本も義務化すれば良いんだね?

それは、日本国憲法15条1項に記されている「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。」という内容から、してはならないという事が分かる。日本では投票するもしないも、それは国民の権利なのであって、義務ではないんだ。

ディアボロ先生
ディアボロ先生
マー君
マー君

憲法で定められているんだったら出来なんだね!もしそれでも義務化したらどんな問題があるかな?

義務化すれば、政治に関心のない人も投票する事になる。そうなれば単に有名人だからとか、美人、かっこいいからという理由で投票する人が増えるのは想像に難くないね。あと、義務化により宗教上の理由で政治的中立、もしくは政治に不参加を守る人たちの思想、権利を奪う事になる。

ディアボロ先生
ディアボロ先生
マー君
マー君

なるほど!投票の義務はやっぱり実現するべきじゃなさそうだね!投票率が低くても、それは国民ひとりひとりの判断だから、無理にその数字だけを改善しようとしても余計におかしくなってしまいそうだね!

投票率が低い要因として、「どこの政党にいれても変わらない」や、「政治に関心がない」などの意見があります。それについては様々な意見がメディアでも取り上げられています。例えば、対立軸の野党が不甲斐ないからなどです。

ここからはかなり個人的な意見にはなりますが、私はそういった事はあまり関係ないのではと考えています。私の周囲では投票に行かない人が非常に多いです。その中には与党、野党の政党の名前すら言えない人もいます。選挙制度について全く知らない人もいます。

なぜ、ここまで政治に無関心なのかと言えば、それはおそらく自分達の生活の中に政治が関わっている感覚が薄いのだと思います。政治に無関心な人が唯一と言って良いほど政治に関心が出るタイミングは、消費税の増税くらいのものではないでしょうか?

なぜ、私がそう思うのかと言えば、現代はあまりにも拝金主義的な感覚を持っている人が多いと思うからです。そして、お金を稼ぐ人は偉く、稼げない人は無能だという考えを持っている人も非常に多い。その考えだと、どうしても貧乏なのは個人の責任であるという考えに行き着いてしまいがちになります。それは裏を返せば政治と自分達との距離が遠くなることを意味します。

しかし、この世の中には全然儲からないが必要な仕事というのがたくさんあります。それは例えば保育士であったり介護士であったりです。

稼げない人は無能だとすれば、そんな職に就く人は無能だというレッテルを貼る事になります。では、そんな職は必要ないかといえばそうではありません。必要だが稼げない。そんな職がたくさんあります。

私たちは有権者は投票する権利を持っています。その権利を行使する事で、自分達の生活をよくする可能性があります。どれだけ個人で努力しても生活が豊かにならないこともあります。誰もが起業家にあり、投資家になりお金持ちになれる訳ではありません。

しかし、生活に困窮して生きていくことすらままならないような状況は、この日本で起こること自体不思議なのです。生活保護が必要な人が受けられない現状で日本が富んでいるとは到底思えません。

それは個人の責任でしょうか?自助努力は必要不可欠ですが、公助を求めるとこも国民の権利としてあります。それを明確に示せる場が投票です。

若い世代の投票率が低いとネタのようにメディアに取り上げられているような状況を、若い世代が仕方ないと思っていること。これが、自分達を苦しめる事になっていることを実感しなければならないのではないでしょうか?

投票する権利は明治時代のはじめには金持ちの男性しか持っていなかった。それが何度も法改正され、今では18歳以上の全ての国民となりました。それは権利を勝ち取った歴史でもあります。

なぜ、それを勝ち取る必要があったのでしょうか?そういったことを想像してみても良いのではないでしょうか?

西 友広
  • 西 友広
  • 趣味:映画鑑賞(ジャンル問わず)
       山登り

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