NHKは生き残れるのか?
NHKは今後ネットでも放送を同時配信する予定だ。そんな中、「NHKから国民を守る党」の躍進を見ても明らかなように、NHKの体制や受信料問題に対して多くの人が関心を持っている。NHKだけテレビ局としては特別な存在である。その特別性とは何か。この時代に求められているのか。今後NHKは必要なのかどうかなどを考えていきたい。
NHKって国営放送じゃないの?
NHKは国営放送じゃなくて公共放送だね。
国営放送と公共放送の違いって何?
国営放送であれば、税金を使って番組を作ったり放送したり出来るけど、公共放送は税金で運営している訳ではないんだ。視聴できる家庭ごとからの集金によって番組を作ったり放送したりしているんだよ。ただし、NHKは全く国からお金をもらっていない訳ではなくて、海外に向けた「国際放送」に関しては国から交付金という形で収入を得て放送しているよ。
じゃあ基本的には税金で放送していないってことなんだね。僕のお家はパパのテレビは見ちゃいけないって言うからテレビないんだ。だからNHKの受信料は払ってないんだけど、これからNHKはネットでも見られるようになるんでしょ?そうなったらパソコンとかスマホを持ってるだけで受信料を払わないといけなくなるの?
今のところそうはならないみたいだね。パソコンにもテレビ放送が見られるようなチューナーが付いていたら受信料を払わないといけないけど、ネットに接続出来るから支払わないといけないという訳ではないよ。
良かった〜。僕のお家そんなに裕福じゃないから・・・。
・・・。
でもさ、別にNHKが見たいからテレビ買う訳じゃない人もいるのに、なんでテレビを持ってるだけで受信料を支払わないといけないの?
その通りだね。だから今NHKに多くの人が「スクランブル放送」にして欲しいと訴えているんだ。スクランブル放送とは、契約した人だけが視聴できる契約の事で、日本だったら「WOWWOW」とか「BS」「CS」などの一部チャンネルで実施されているんだ。
それでいいんじゃないの?なんでNHKはスクランブル放送にしないの?
当たり前だけど、収入が減るよね。そうなると困ることになると総務省が判断しているんだけど、その理由は、そもそもNHKは災害報道や政見放送を担っているので、国民が広く公平に受信料を負担すべきだと言っているね。
それって国営放送の説明をしているように聞こえるね。
先生も説明しながらちょうどそういう風に思ったところだよ。ちなみにそういったNHKの問題に対してNHKではなくて総務省が説明するのNHKは総務省の外郭(がいかく)団体だからだよ。
外郭団体って何?
外郭団体とは、国または地方公共団体の組織の外にありながら、そこから種々の援助を受け、行政を補完するような事業や活動を行う団体のことだね。
放送法第六十四条(受信契約及び受信料)
協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であつて、テレビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。第百二十六条第一項において同じ。)若しくは多重 放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りで ない。
2 協会は、あらかじめ、総務大臣の認可を受けた基準によるのでなければ、前項本文の規定により契約を締結した者から徴収する受信料を免除してはならない。
3 協会は、第一項の契約の条項については、あらかじめ、総務大臣の認可を受けな ければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
4 協会の放送を受信し、その内容に変更を加えないで同時にその再放送をする放送は、これを協会の放送とみなして前三項の規定を適用する。
NHKはスポンサーがないから自由な報道ができる?
パパはNHKはスポンサーがないからニュースも公平に流せるはずだって言ってたんだ。でもさ、総務省の外郭団体って先生が言ってるの聞いて思ったんだけど、それじゃ政府の問題を厳しい目で報道とかしにくいんじゃないかなって。
その意見は正しいかもしれないね。実際にNHKは外部の圧力に屈してしまって、報道を自粛することが度々あると指摘されている。最近ではかんぽ生命保険の不適切販売の情報収集に問題があった(NHKがツイッターに情報提供を促す動画を投稿した)と日本郵政がNHKに抗議した問題がある。そもそもかんぽ生命保険の問題はNHKの「クローズアップ現代+」で多くの人に知れ渡った。これはスクープだし、非常に大事な報道だったんだ。だけど、この日本郵政側からの抗議に対してNHKは動画の削除、謝罪、そして「クローズアップ現代+」の続編放送を延期した。決して情報提供をSNSでお願いすること自体は違法ではないだろうけど、何故ここまでNHKが弱腰なのかと言えば、おそらくそれは日本郵政の副社長をはじめ、日本郵政には元総務省幹部が多いからなんだ。いわゆる天下りの人たちだね。
結局、スポンサー問題がなくても、圧力がかかってしまうような関係からは逃げられないのかな。
かもしれないね。こういったNHKに対する圧力がかかったんじゃないかという疑いは多く報道されているから、ネットで調べることをオススメするよ。NHKの番組制作、報道に関わる人たちが一生懸命頑張っても権力に対して屈してしまう組織の体制があるなら、それは無駄な努力になってしまう。
NHKの事業体説明
- NHKはいわゆる特殊法人とされていますが、NHKの行う公共放送は、政府の業務を代行しているわけではありませんので、放送法ではNHKがその使命を他者、特に政府から干渉を受けることなく自主的に達成できるよう、基本事項を定めています。基本事項の大きな特徴としては、仕事と仕組みについてNHKの自主性が極めて入念に保障されていることです。
権力を監視する役割を担えるのか?
NHKは自主性を保つために財政の自立が必要であり、それが受信料制度であると言っています。しかし、自主性を保つには財政の自立だけでは不十分と言わざるを得ません。それはNHKが総務省の外郭団体であるということだけで説明は十分足りると思います。もちろんその中でいかに自主性を保つ努力をするのかはNHKの仕事であるので、その点についてはNHKの報道を見る国民としては何としても圧力に屈せず、権力を監視する役目を果たして欲しいと願うばかりなのだが、果たしてそれは可能なのだろうか。NHK関係者が「総務省が関わる問題に触れるなという雰囲気があった」と発言しているようだが、これは直接的な圧力ではなく、いわゆるバイオパワー(「監視されているという暗黙のプレッシャーによって、実際には監視されていなくても監視されているかのように振舞うこと」を言う)であり、そういう見えない圧力を日々感じている報道関係者は、本当に伝えたいニュースを伝えられるのだろうか。
イギリスのBBCとNHKの違い
先生!NHKと同じような仕組みを持った国ってないの?
あるよ。イギリスのBBCはNHKと同じように国営放送ではなく公共放送だね。
へぇ〜!イギリスは日本みたいに問題になってないの?
大きな問題にはなっていないけど、やっぱり国民としては支払わなくて良いなら払いたくないのは一緒のようだね。だけど、日本と違うのは契約の方法だね。
日本は集金の人がお家をまわってるよね。僕の家はテレビないよって言ってるのに何回も契約してって来るんだ。お昼寝してる時にわざわざチャイムで起こされるのちょっとムカッとするだよね〜。BBCはどうしてるの?
BBCは銀行引き落としでもクレジットカードでも小切手でも銀行振込でもOK。郵便局ではテレビ・ライセンス・ペイメント・カードという受信許可証を購入できるよ。ライセンスを取得していれば、テレビを買う時にライセンスナンバーを記入して購入という流れになる。もし支払ったことがない、ライセンスのない人がテレビを買おうと思ったら、購入後にライセンス取得をするための通知が局からくる流れになっている。日本よりも徹底していると言えるね。おかげで受信料支払い率は90%を超えている。不払いの場合の罰金が14万円くらいもするから、みんな嘘つかずに払ってるんだろうね。ちなみに日本の受信料支払い率は80%程度だね。
そもそもさ、日本もテレビを買う時に契約すれば良いんじゃないの?そしたらわざわざ集金に回らなくて済むよね。
実はNHKは契約や集金業務に年間700億円程度支出しているんだ。
信じられない!一世帯年間受信料が1万5000円程度として、465万世帯分はほとんど無駄なお金に使われているって事!?
そう考えると受信料はもっと安く出来るんじゃないかって思っちゃうね。
は〜。それならなおさらテレビを買う時に契約を義務付ければ良いだけだって思うんだけどな〜。もしかしてそうするとテレビを買う人が減っちゃうかもとか考えてるのかな?
それは分からないけど、今の若い世代はテレビ離れば加速していると言われているから、テレビの消費が落ち込む可能性はあるよね。
なんか色々勘ぐっちゃうな・・・。
NHKは本物の自主性を
NHKの自主性が疑われている中、NHKの強みは一体どこにあるのだろうか。本来、民放には出来ない、NHKにしか出来ない仕事は多くあると思われるが、現状それも疑わしいものだ。総務省の言う災害報道は果たして民放では扱えない事案なのだろうか。政見放送も民放に委託することは不可能なのだろうか。考えれば代替え案はいくらでも出そうな案件をNHKにしか出来ないと言っているのでは、NHKの本当の必要性が見えてこないのではないか。NHKはやはりスポンサー企業などを気にする必要がなく、報道に関しては事実をありのまま、そしてコメントは自由であることを貫けるのが一番の強みであるはずだ。以前、「公平中立を欠く放送局には停波」と言う趣旨の高市早苗総務相の脅し発言を、政府にとって都合の良い報道こそが公平中立であると言う風に聞こえた人は少なくないだろう。公平中立な報道かどうかは癒着や権力による圧力がない、もしくはそれに屈しない報道の事であるはずだ。それぞれの放送局が持つイデオロギーに違いがあるのは当然であり、事実を報道する中でそれについてのコメントは自由であるべきだ。もし、事実を捻じ曲げることがあり、改善しないのであれば、それは停波も致し方ないであろう。それは電波法七十六条で認められている。しかし、事実を伝えた上でのコメントや報道の仕方云々により停波という措置をするのであれば、それは言論の自由を奪うことになり、憲法第二十一条を無視した違憲発言なのだ。彼女は自身の発言を撤回しているが、当時、自民党の情報通信戦略調査会が、NHKとテレビ朝日の幹部を呼び、番組内容について事情聴取を行っていた事実からも、自民党として圧力をかけていたのは間違いない。もし、自民党の反対勢力が金や圧力によりマスコミを操作していたとするなら、自民党はそれを問いただし、改めさせる必要があるが、そういった事実はない以上、報道に関しては問題がなかったと言える。
NHKは総務省の外郭団体であったとしても、国営放送ではなく公共放送であり、国民から直接受信料を受けている立場として、国民に対して誠実で正確なありのままの情報を発信し続けるべきである。今後も受信設備を設置すれば必ず契約しなければならないという法律を盾に受信料を受けるのであれば、現在国民の間で問題視されているNHKの体制に対しては真摯に改善する事を約束しなければならない。国民にはNHKを見ないが他の民放番組を見たいからテレビを買った、だからNHKを見ないので受信料を支払わないという事は認められていない。権力をウォッチする立場であるNHKが、法律という力を行使して国民の選択の自由を奪っている事を私は正しいとは思わない。WOWWOWその他がスクランブル放送を行っている現代において、NHKの立場も変わらざるを得ないと思っている。その中でも何度も言っているが、NHKの強みはあるはずなのだから、徹底して圧力には屈しない姿勢を見せ続けていただきたいものだ。