覚醒剤って何?
芸能人が覚醒剤使用で逮捕などのニュースはよく聞くかもしれません。覚醒剤はなぜ危険なのか。そもそも覚醒剤を使用するとどうなるのか。依存症になる人もいるけどどれくらい?など一緒に見ていこう。
ディアボロ先生!覚醒剤って使うと逮捕されるんだよね?なのになんでみんな使っちゃうの?使うとどうなるの?
日本では覚醒剤の使用は犯罪だね。だけど、一度でも使ってしまうと中毒になってしまって、依存症になるリスクがお酒やタバコよりも高く危険と言われている。アンフェタミン類の覚醒剤を使用すると、ドパミンとノルアドレナリンが脳の中で多くなって、強烈な快感の後、多幸感や高揚した気分になると言われている。
じゃあ覚醒剤は何もなくても幸せになれる薬ってことだね?
確かにそう考えられるかもしれないけど、効果が切れると強い倦怠感(けんたいかん:心身の疲れによってだるく感じること)や焦燥感(しょうそうかん:思うように事が運ばずにイライラすること)に見舞われるのは間違いない。
その瞬間は良くても、その後が大変なんだね。でも、それを分かっていて使ってしまうのはなんでなんだろう?
そういった知識がないままに使ってしまう人もいるはずだね。かなり前だけど、「この薬を使うと食欲が減るから痩せるよ」と言って売人が若い女性に覚醒剤を渡した。ダイエット目的で若い女性が気軽に使ってしまっていたという話もある。
覚醒剤でダイエットか〜。
依存症になるリスクがある覚醒剤
確かに食欲が抑えられる効果もあるんだけど、覚醒剤に対する耐性(たいせい:反復した使用で薬の効果が低下する現象)がついてしまって、より多い量じゃないと効き目が少なくなって、使用量が増えて、いつも間にか依存症になっていたというケースは非常に多いようだよ。ちなみにダイエット目的の女性は覚醒剤と知らずに使っていたけど、気がついたら依存症になってしまうということもある。
覚醒剤で捕まった人って何度も捕まるイメージがあるけど、それくらい辞められないものなの?
覚醒剤の再犯率は60%を超えているんだ。だから刑務所に入ったからやめられるというものではなさそうだね。
60%って半分以上だね!一度でも使ったらまずやめられないと思っておいた方が良さそうだね。
覚醒剤で逮捕された人の中には、捕まるときに「ありがとうございます」と言う人がいる。
テレビで聞いたことあるよ。どういう意味なのか僕には分からなかったけど。
それぞれ思うことは違うだろうけど、捕まることによって、薬物使用から抜け出せるという思いを持つ人もいるらしいんだ。
じゃあ捕まってホッとしている人もいるってことなんだね。それってものすごく可哀想だよ。
そうだね。覚醒剤を初めに使用した時はほとんどの場合、本人の意思な訳だから、本人が悪いんだけど、そこまで苦しい思いをするとは想像できなかったんだろうね。それに日本では覚醒剤の使用は犯罪なのはみんな知ってるよね。だから、覚醒剤の依存症になっていても、誰にも相談できずに一人で苦しんでいる人たちは日本にたくさんいると思うよ。
そんな人たちはどうしたら良いの?
薬物依存症専門のクリニックがあるよ。そういったところで適切に治療を行うことで、元に戻る訳ではないにしろ、覚醒剤を使わずに長い年月過ごせている人もいる。
一人でなんとかしようとしても難しいから、みんな治療を受けたら良いね。
医師は覚醒剤使用に関して通報する義務がある?
でも、病院の医師は覚醒剤使用者を確認したら、通報するかもしれない。
え〜!そうなの?じゃあ治療しに行くときは逮捕されるのが前提ってこと?
大麻、麻薬、あへんなどの薬物常用患者を見つけたら、医師は「麻薬及び向精神薬取締法」によって、都道府県知事に届出提出義務があるんだ。だけど、覚醒剤に関しては報告義務がない。そして、医師には守秘義務(しゅひぎむ:職務上知り得た秘密を守る義務)があるから、通報しなければならない訳ではない。でも、実際に通報した事例がない訳じゃない。だから、覚醒剤使用者が治療に行くにはそういった不安を抱えながらいかなければならない。
そうか〜。まず法を犯したことを反省して逮捕されるしかないのかな。
病院ではなく、まずNGOや自助グループに相談してみても良いよ。
身近な人から薬物使用について相談されたら ← 参考サイト
覚醒剤使用者に関してはほとんどの場合、医師は守秘義務を優先して考えてくれるようだけど、まずNGO団体や自助グループに相談してみるのをオススメするよ。
そんなところがあるんだね!
悩んでいる人はとても多いけど、一人では改善できない。だけど相談もできない。そんな人にとってはまず悩みを打ち明ける事ができる環境はとても大事。犯罪者として罰を下すだけでは覚醒剤の再使用はほとんど不可能だというのは数字ではっきりしているし、本人たちの苦しみは罰を持って解消される訳じゃない。目的が再使用させない事だとしたら、適切な治療やプログラムを受けられるこういった環境が増えていけば良いね。
ポルトガルでは覚醒剤は非犯罪?
ポルトガルでは若者の薬物使用が深刻な問題となっていたんだ。そこで2001年にポルトガルでは少量の薬物の所持や使用は罪に問わない事にした。
薬物使用が深刻な問題になったのに、厳しくせず犯罪じゃないって事にしたんだ!何となく反対の方法のように感じるけど、何でそうしたの?
覚醒剤を使用し続ける人のほとんどが、覚醒剤を使用して幸せになりたいと思っている訳じゃなくて、覚醒剤を使いたくないけど、使わないと苦しいから使ってしまうという側面がある。そんな覚醒剤使用者に対して大事なのは、犯罪だから取締るということではなく、困っているのなら助けてあげようという姿勢だと考えたんだ。だから、今まで覚醒剤の中毒になっていた人たちは、悩んでいても誰にも相談できなかったけど、非犯罪となったおかげで、自分たちの悩みを相談しやすくなったんだ。
治療を受けようと思って誰かに相談しようとしても、通報されちゃったら逮捕されてしまうと考えて、治療に踏み出せなかった人たちがたくさんいるんだね。そっか〜。そう考えると、覚醒剤の中毒になっている人たちにとって、本当に覚醒剤を断ち切って良くなってもらうには、刑務所じゃなくて治療が必要なのかもしれないね!ところでポルトガルはそれで効果あったの?
それが効果がちゃんと出たんだ。まず薬物で死んでしまう人が減り、注射器の使い回しによるHIV感染が減り、そもそも薬物に手を出す人が減ったんだ。
すごいね!犯罪だよって言っている方が手を出しにくいものだと思っていたけど、犯罪じゃないよって言うと少なくなるんだ!
もちろんその背景には、覚醒剤で悩んでいる人たちがちゃんと悩んでいると言えるようになった社会ができたからだけどね。罰によって抑制するのではなくて、ちゃんと治療をしようと寄り添う形ができたことで、ポルトガルは薬物濫用(らんよう:みだりに用いること)対策のモデルとして世界的に取り上げられている。
手を出してしまった背景に焦点を当てずに、罰を加えるだけではなかなか再使用を防止することは出来ないだろう。覚醒剤を使用してしまった人の中には、虐待されて育った者、仕事などのプレッシャーに耐えられなかった者、騙されて使ってしまった者など様々だ。もちろんどんな境遇であったとしても、それをどうするかは本人の自由である。しかし、覚醒剤の恐ろしいところは依存性である。覚醒剤を使用してしまった人をどのように評価するかはそれぞれ意見は違うかもしれない。しかし、この社会に覚醒剤や麻薬などが蔓延することはほとんどの人は望んではいない中で、日本だけでなく世界的にそういった薬物がなくなる為には、まず皆が薬の知識を持つ事と、現在使用している人たちが、使用しなくなれるようにサポートすることが必要なはずです。需要があるから売れるのであり、新しい需要を生み出させないと共に、現在の需要を縮小していくことで、そのような薬物でお金を稼ぐ事が出来ない社会になるのが理想ではないか。他国の成功事例を日本でもすぐに取り入れられるかは分からないが、一人一人がそういった事例を元に、考えるきっかけになればと思っている。