畳ってどうやって作ってるの?
畳の部屋は何故か落ち着くという人も多いのではないでしょうか?畳の弾力は体にとって安全で、フローリングにはない温かみがあります。そんな畳の歴史から作り方、材料についてを一緒に見ていこう。
畳の歴史
ディアボロ先生!友達の家に行ったら畳の部屋があったんだ!僕の家には畳の部屋がないんだけど、なんか落ち着くし寝っ転がったら気持ちよかったんだよね!それに良い匂いだったんだ〜!あの畳って昔から日本にあったの?
日本の歴史的なものは中国から伝わったものが多い中で、畳は日本発祥と言われているんだ。時代は奈良時代の聖武天皇が使っていたというのが始まりと言われている。
奈良時代:672年から793年まで
そんな昔があるんだね!昔も今と同じように使われていたの?
当時は座布団(さぶとん)のような使われて方をしていたと言われていて、聖武天皇が使っていたのは御床(ごしょう)という木製の台の上に畳を置いて使っていたらしい。これを御床畳(ごしょうだたみ)と言う。
全然イメージが違うね!天皇がそういう使い方をしていたって想像すると、普通の人は使ってなかったんだろうね。
そうだね。平安時代に入ってからは今のような畳になっていたようだけど、必要な分だけ敷くという使い方で天皇や貴族しか使えなかったらしい。室町時代では身分によって畳縁(たたみべり:畳のふちにつける布)の柄(がら)が決められていたようだよ。
平安時代:794年から1184年まで
室町時代:1333年から1573年まで
室町時代の身分を表す畳縁
繧繝縁(うんげんべり)・・・天皇・皇后・上皇
大紋高麗縁(だいもんこうらいべり)・・・親王・摂関・大臣
小紋高麗縁(しょうもんこうらいべり)・・・公卿
無地縁(むじべり)・・・四位以下の貴族
意外と知られていない畳の大きさ
畳には京間と江戸間で大きさが違うんだ。
畳って一種類じゃないの?
そうなんだ。京間は191cm×95.5cmに対して、江戸間は176cm×88cmと、少し小さいんだよ。
どうして同じ大きさじゃないの?
京都の家の建て方は畳の大きさに合わせて家を建てたと言われていて、関東では家を建ててから畳の大きさを調整したと言われているんだ。その名残だろうね。
家の建て方の違いか〜!他にも種類はあるの?
京間と江戸間の間くらいの大きさの中京間というのがあるよ。これは良く中部地方で使われている。あと、団地間という江戸間よりさらに小さい畳があるんだけど、高度成長期に団地がたくさん建てられた時に生まれた種類だよ。
畳の作り方
畳って手作りなの!?すごい大変な作業だね!
一部機械を使ったりするけど、ほとんど手作業だから、畳職人と呼ばれる人がいないと畳は作れない。お寺なんかの畳は一つ一つ大きさや高さが微妙に違っていたりするんだけど、その建物の形や柱の関係でどうしてもそういった部分が出てしまうんだ。畳職人はそういった細かなサイズや高さの調整を行っているから、機械ではまだできない部分が多いだろうね。畳職人になるには専門の学校に通ったり、弟子入りしたりする方法があるよ。
本当に職人って感じだね!ところで、畳って元になるものの上に何か貼り付けて、縁(へり)を縫いつけてるよね?どういう構造になってるの?
畳の素材
畳の素材は大きく分けて3つ。「畳表(たたみおもて)」「畳床(たたみとこ)」「畳縁(たたみへり)」だ。まず畳床を作る大きさに合わせて切る。この時にデコボコにならないように叩いたりしながら調整する。そして畳表を貼り付けて縫う。最後に畳縁を縫って完成だけど、その工程の中でも繊細な技術がたくさん必要だし、動画を見ても簡単に出来る作業には見えないよね。
なるほど〜!畳床と畳表は同じ素材じゃないの?
畳床はもともと稲藁(いねわら)を使っていたんだけど、最近では材チップの圧縮板で発泡スチロールを挟んだ軽い建材畳床がよく使われている。これは近年の住宅事情で畳の需要が少なくなったなどの理由もあって、藁の需要も減って生産が少なくなったからだね。畳表はイグサ(藺草)が使われているよ。だから素材は一緒じゃないんだよ。
そうなんだ〜!イグサって日本で作られてるの?
畳にとって欠かせないイグサ(藺草)
イグサは日本で作っているよ。中国から畳表を輸入しているけど、日本で育てられたイグサの方が頑丈で出来が良い。それに畳表を作る作業の繊細さは日本の方が優れている。こういったところに日本人らしさを感じたりするね。ちなみに日本産イグサの95%は熊本県で収穫されているよ。
どうしてほとんど熊本県なの?
イグサは十分な水がなければ育たないんだ。熊本県南部を流れる球磨川と八代平野という環境がイグサを育てる環境として適しているんだ。そして何よりイグサ農家の皆さんが、より良い品質を研究して良質なイグサ、そして畳表を作っているからこそだけどね。
何気なくあるものも、そういった人たちの努力によって支えられているんだね!イグサは十分な水が必要って言ったけど、それってお米を作るのに似てるよね。イグサも田植えみたいに種じゃなくて苗を植えるの?
その通り。お米もイグサも種から作ると個体の変異が大きくて、毎年同じ品質のものを作るのが難しいんだ。だから株分けという方法をとるんだ。株分けとは植物の根や地下茎を親株から分けて移植する方法で、毎年品質を保てる代わりに、種と違って栽培効率が悪い。イグサを育てる過程で2回も掘り出して苗を分けないといけない。だからイグサの栽培は収穫までに長い期間が必要なんだ。
畳表の素材「イグサ(藺草)」栽培は大変
種だったら収穫しておしまいだけど、株分けは栽培途中に苗を掘り出さないといけないのか。それでまた植え付けるんでしょ?本当に大変だね!収穫までにどれくらいかかるの?
1年7ヶ月だよ。12月に苗を植えて翌年の8月に掘り出して株分け、そしてまた植え付ける。12月に掘り出し、株分け、植え付けをまた行う。さらに翌年7月にようやく収穫となるんだよ。
すごい手間隙(てまひま)かけて育ててるんだね!畳を作っている畳職人さんもすごいけど、イグサ農家さんもすごいね!
この人たちの努力がないと、日本の畳はなくなってしまうね。ところでマー君が畳は良い匂いって言ってたけど、あの畳の良い匂いはこのイグサの匂いともう一つ、畳表を作る工程で付けられる匂いなんだよ。
畳の良い匂いって付けられた匂いなの?
香水のようにわざと匂いをつけるものではないんだけど、イグサの表面を強くしたり、乾燥から畳を守る為にする工程があの畳の良い匂いのもとなんだ。
「泥染め」が畳の良い匂いのもと
イグサは泥染めという工程であの畳独特の良い匂いがつくんだ。
泥でイグサを染めるの!?
そうだよ。染土という天然の粘土で泥染めをするんだ。その後に60℃の熱風を15時間当てて乾燥させたら、あの畳の独特な良い香りが出てくるんだ。もちろんそれは畳表の保護や湿気の調整や、日焼け防止、光沢を出すといった畳に重要なものの為に行っているんだけどね。
イグサを育てて畳屋さんに渡すだけじゃないんだね〜!
畳健康法?
畳はお寺や柔道場や剣道場などで見かけます。長く床に座ったり、運動したり、投げ飛ばされたり出来るのは、畳の絶妙な柔らかさがあってこその事。実は睡眠中に寝返りを何度もうつのは血液の循環を良くする事と、背骨や骨盤の歪みを調整している為だと言われています。あまりにも柔らかいベッドだと体が沈んでしまい、寝返りがうちにくく、夜間の寝返り回数が減ってしまいます。
畳にはちょうど良い反発力がり、寝返りを容易にうてるという利点もあります。畳の上に煎餅布団を敷くだけの昔ながらの生活は、体にとって良かったのかもしれません。腰痛や肩こりがある方は、畳の上で寝るという習慣をつけると良いかもしれません。最近では自宅が洋風で全ての部屋がフローリングだという家は珍しくありません。そんな中、畳ベッドなる商品があります。実は筆者は自宅がフローリングですが、畳のあの感じが好きなので、畳を一畳分だけ持っています。簡単な体操などをする際に使っていますが、運動用のマットより優れていると感じています。
明治以降、西欧文化が日本に影響を及ぼし、良い面は当然あったものの、日本の元々ある素晴らしいものが奪われていったように思います。今一度、畳の素晴らしさを多くの方が味わい、ただの文化としてではなく素晴らしい機能性を再認識してみてはいかがでしょうか。