どうして蛇口から綺麗な水が出るの?
私たちが利用する水道水は、なぜ飲み水として利用できるのだろうか?蛇口のハンドルを回すだけで水が出るというのは、よく考えると不思議な事かもしれません。普段当たり前に思っている水道の仕組みを理解して、さらに昔の水道はどのようなものだったのかも一緒に見ていこう。
私たちは水道水を驚くほど使用している
ディアボロ先生!学校でも家でも公園でも、どこの蛇口からでも綺麗な水が出てくるのって、どこかで貯めた水を綺麗にする工場とかがあるの?
水道水を作る工場を浄水場と言うんだけど、この浄水場では河川や湖沼(こしょう:湖と沼)から取水(しゅすい)して、ゴミなどの浮遊物を取り除いて、消毒し、綺麗な水を家庭などへ送り出しているんだよ。
浄水場って言うんだ!でも、僕たちが使う水の量ってすごい量だよね?そんな量を浄水場で全家庭に送るって想像できないな〜!
まず1人が1日に使用する水道水の量は200ℓを超えると言われているよ。朝、顔を洗って歯を磨くだけでも、20ℓ近くの水道水を使用している。もちろん節水している人はもっと少なくなるけど、通常1分間で12ℓ程度水が出るから、20ℓくらいあっという間に使ってしまうのは想像できるよね。
200ℓか〜!しかも1人で?とんでもない量に感じるけど、シャワー浴びたりお風呂溜めたりしたら、簡単にそれくらい使っちゃうんだろうな〜!
浴槽には約200ℓの水が溜められるから、もし湯船に浸かるなら、それだけで200ℓ使うことになるね。
え〜!じゃあ僕たちが一年間に使う水道水の量ってどれくらいになるの?
年間水道水使用量は琵琶湖1杯分!?
まず、私たちが水を使用するのは家庭用水だけでなく、オフィスや飲食店、ホテルなどの都市活動用水もある。家庭用水と都市活動用水を合わせて生活用水と呼ぶよ。さらに工業分野で用いられる水を工業用水。生活用水と工業用水をまとめて都市用水と呼ぶ。また、農業で用いられるのは農業用水と呼ばれている。
色々な場所で使われているって事だね!なんとなくややこしい!
家庭用水 + 都市活動用水 = 生活用水
生活用水 + 工業用水 = 都市用水
用語はイメージで覚えておくと良いよ。そして、年間(2017年)に生活用水としては約146億m3、工業用水として約110億m3が使用されている。だから都市用水の使用量は約257億m3となっている。農業用水としては約537億m3使用されているから年間合計約793億m3になるということだね。
ディアボロ先生!全然イメージできない!
例えるなら、日本一大きい湖である琵琶湖おおよそ3杯分だね。
そんなに〜!!
農業用水の内、水稲等の生育等に必要な水を「水田かんがい用水」、野菜や果樹等の生育等に必要な水を「畑地かんがい用水」というのがあるんだけど、このかんがい(灌漑)施設は浄水場とは異なるから、浄水場を通った、私たちが使用する水道の水だけで言えば、琵琶湖一杯分が年間の使用量となるよ。
かんがい?
農地に人為的に水を注ぐことを灌漑(かんがい)と言うよ。このような施設があることで、農地に安定的に水を送り出すことができるんだよ。
これが、日本の水使用量の3分の2なんだね!確かに農業で使用する水の量が多いのは想像できるね!
浄水場の仕組み
では、実際に私たちが利用している水道水が、浄水場でどのように処理されて家庭まで届けられているかを見てみよう。
塩の作り方の回で、海水から塩を作る時に、砂とか泥が含まれてるか濾過(ろか:液体をこして混じり物を取り除くこと)したよね。あれは、泥は下に溜まって砂は浮くから、真ん中あたりの海水を汲み上げてたんだよね。浄水場は砂や砂利の中に水を通すことで濾過するんだね!
よく覚えていたね。濾過は濾過でも方法が違うんだ。浄水場ではポリ塩化ナトリウムを投入して水の中のゴミや汚れを塊にして、濾過地では砂や砂利を通して綺麗な水にする。
それに、塩素を注入しているみたいだけど、塩素って体に毒だよね?
そうだね。だから水道法では、安全性の観点から蛇口時点での水道水中の残留塩素を0.1mg/L以上保持するように定められているけど、1mg/L以下にしようという目標値も設定されているんだ。
塩素は入れなきゃダメなの?
塩素を注入しないと、水に雑菌が繁殖してしまう可能性がある。少量の塩素なら基本的に体に害はないから、定められた範囲内の塩素の量を管理して、水道水は各家庭に送られているんだよ。
塩素を抜く方法は?
それでも、僕は塩素が気になっちゃうな〜!
そういう人は多いよ。塩素を抜く方法として、5〜10分程度煮沸(しゃふつ:煮立てること)するのが一般的だね。汲み置きして日光に当ておくのも有効だけど、1〜2日放置しなければならない。
じゃあお茶を沸かして飲むんだったら塩素が抜けてるって事だね?
そういう事だね。
水道で見る文化の発展と衰退
水道は江戸時代にもあったんだ。今のように浄水場があるわけではなかったんだけど、そもそも水が過度に汚染されてはいなかった。だから、そのまま飲み水としてしようされていたんだ。
明治維新で西洋文化が日本に入ってきて、工業化が進んで工業廃水とかが川を汚染してしまったから、水道も進化するしかなかったんだね!それにしても江戸は良い街だったんだな〜。
そうだね。江戸時代のままがよかったかどうかは別として、江戸はとてもエコで綺麗な街だったと、当時西欧人が江戸を旅した時にそう評価したそうだ。人間や動物の糞尿、残飯は田畑に使うし、夜は魚の脂で火を灯した。環境に配慮され超エコ社会だったんだよ。
そう考えると、現代は確かに発展しているように見えるけど、大事なものを破壊しながら発展しているような気がするから、環境的には衰退していってるような気がするな〜!
環境の面から考えるとそうかもしれないね。ただ、やはり現代の方が浄水場のおかげで飲み水は汚染されていないし、医学の発展などもあり何より寿命は伸びている。今を生きる人間だけの目線に立てば、良い環境なのかもしれないよ。
そうなのかな。それにしても水道って水の通り道っていう意味を江戸時代の水道を見て理解できたよ!井戸だって湧き水が底に溜まってるものだと思ってたから、水道で水が送られてるなんて僕知らなかったな!
もちろん井戸には地下水の水脈を利用するものもあるよ。やっぱり江戸のような人口の多いところでは、しっかりと水道を整備しないといけないんだ。みんなが川まで水を汲みに行くしかなかったとしたら、川沿いにしか人が住めないからね。古代の文明も大きな川の近くで発展しているけど、水はそれだけ生活には大切だと言う事だね。
そうだよね!今はどこでも水が出るけど、よく考えたら本当にすごい事だ!