安楽死① 〜安楽死とは?〜

もし、現代医学では治療の術(すべ)がなく、余命が短いと分かり、命の終わりまで身体的苦痛が続いたり、どんどん体が動かなくなってくる事が分かっていたとして、あなたは安楽死という手段を取るだろうか?また、家族がそのような状況になり、安楽死をしたいと言った時に、あなたはどう思うだろうか?日本では安楽死は認められていないが、海外で安楽死を受けることは出来る。辛い事かもしれないが、いつか誰にでもやってくる死と、もしかしたら自分にも起こりえる病気を想像して、安楽死が必要かどうかだけでなく、そういう選択をした人の気持ちを考えてみよう。

マー君
マー君

こないだテレビで安楽死する人のドキュメンタリー番組を見たよ!日本では安楽死出来ないって聞いたけどどうして?

安楽死が出来ないのはまだ法律がないからだよ。今、もし日本でお医者さんが患者さんを安楽死させたら罪に問われるからね。

ディアボロ先生
ディアボロ先生
マー君
マー君

僕がテレビで見た人みたいに体が動かなくなっていって、苦しくなっても安楽死はしたくないかな。やっぱり死ぬのは怖いもん。

そうだね。人間はいつかは死ぬけど、自分で死ぬ時を決めれるものではないね。

ディアボロ先生
ディアボロ先生
マー君
マー君

いつか死ぬって考えるだけでも怖いよ〜。でも安楽死をする人は僕とは違うんだね。

近い将来に間違いなく自分でご飯が食べられない、トイレもお風呂も自分で出来ない、すべて誰かにやってもらわないと生きていけなくなるのが分かっていて、しかも「ありがとう」の一言も言えない体になると分かっていたら、もしかしたら考え方も変わるかもしれないね。なぜ、そんな考えになるのかを想像することは相手の気持ちを理解する上で大事だね。

ディアボロ先生
ディアボロ先生
マー君
マー君

僕はいつもママに頭洗ってもらってるけど、「ありがとう」って言ってなかったかも!

・・・。
「ありがとう」を言えるならちゃんと言おうね!

ディアボロ先生
ディアボロ先生
マー君
マー君

わかった!考えたんだけど、もし僕がそんな大変な病気にかかって寝たきりになった時に、病院にかかり続けるお金ってママが払ってくれるの?

そうなんだけど、もし難病って言って大変な病気になった場合は国から助成金が出るから、全額ママに負担する訳ではないよ。

ディアボロ先生
ディアボロ先生

画像引用:難病情報センター「医療費助成における自己負担上限額(月額)」(2018年8月現在)

もちろん助成金が出るので、難病にかかった人やその家族にはありがたいんだけど、手続きの多さや、結局介護に家族などの力は必ず必要だから、お金の負担だけでなく、そういった介護してくれる人に対しての申し訳なさを苦痛に感じる人は多いようだね。

ディアボロ先生
ディアボロ先生
マー君
マー君

やっぱりそうなんだ〜。でもなんでみんなのお世話になっちゃいけないの?動けないんだから仕方ないよね!なまけてる訳じゃないのに可哀想だよ!

これは別に難病の話だけじゃないね。マー君は学校で友達とみんなで助け合ってると思うけど、マー君もおじいちゃんになったら自分で起き上がれなくなったり、自分でお風呂に入れなかったり色々出来ない事が増えるはず。これはみんな一緒だね。家族にばかり負担が増えないようにしないといけない。だから他人事として考えずに、簡単に死ぬという意見が出ない社会になるように、マー君のような意見を持つ人が増えたら良いね。

ディアボロ先生
ディアボロ先生
マー君
マー君

僕なんてまだ自分で頭洗えないしね!

自慢しない方がいい事もあるよね!

ディアボロ先生
ディアボロ先生

積極的安楽死と消極的安楽死

マー君が安楽死の番組を見たと言っていましたが、おそらくそれは積極的安楽死の事です。

積極的安楽死とは、耐え難い苦痛や治療法がなく助かる見込みのない末期患者が、医師の助けを得て自ら死を選ぶ事。明確な定義はされていませんが、方法は薬を飲む、または点滴が用いられています。

消極的安楽死とは、延命治療を行わないことで、尊厳死とも言われています。日本尊厳死協会によると「尊厳死とは、不治で末期に至った患者が、本人の意思に基づいて、死期を単に引き延ばすためだけの延命措置を断わり、自然の経過のまま受け入れる死のことです。本人意思は健全な判断のもとでなされることが大切で、尊厳死は自己決定により受け入れた自然死と同じ意味と考えています。」とあるように、積極的安楽死とは別のものを指します。

マー君
マー君

積極的安楽死が出来る国ってどこ?

積極的安楽死が認められている国は、オランダ、コロンビア、ルクセンブルク、ベルギー、オーストラリアのビクトリア州がある。ちなみにスイスに関しては認めている訳ではなく、自殺幇助(じさつほうじょ)は罪に問わないというだけで、国として認めている立場ではないよ。カナダとアメリカの一部の州は尊厳死法が制定されていて自殺幇助(じさつほうじょ)のみ認められているよ。

ディアボロ先生
ディアボロ先生
マー君
マー君

まだまだ出来る国は少ないんだね〜。

そうだね。日本では出来ないし、アジアでは一カ国も認められている国はない。スイスは外国の安楽死希望者を受け入れる団体があるから、安楽死が認められていない国の人で希望する人はスイスに行く人が増えているようだね。あと、オランダは安楽死が医療保険適応の唯一の国だね。

ディアボロ先生
ディアボロ先生
マー君
マー君

もし認められると良い事ってあるの?僕はそんな事を認める国が増えるのは悲しいな〜。

悲しい話だけど、日本の自殺をする人は年間に2万人を超え続けている。その原因の毎年トップが健康問題なんだ。スイスでは安楽死が認められてから自殺者数は減ったとされていて、自殺ではなく安楽死を選んだという意見もあるね。

ディアボロ先生
ディアボロ先生
マー君
マー君

結局死ぬ方法が変わっただけという事?じゃあ日本で安楽死を認めたら自殺者数は減るかもしれないけど、安楽死する人は増えるかもしれないって事だね。ん〜、悲惨な死に方を選ぶよりマシって事?

そういう言い方をすればそうかもしれないね。

ディアボロ先生
ディアボロ先生
マー君
マー君

安楽死が認められると問題になる事ってあるのかな?

どんな困難な中でも生きようとする人やその家族に対しての配慮(はいりょ)に欠けるかもしれないね。そんな生きようとする人たちに対して意欲をそぐ事になりかねないかもしれないね。

ディアボロ先生
ディアボロ先生
マー君
マー君

そんなのダメだよ!基本的人権の尊重は憲法で認められているんだよ!

難しい事を知っているね。もし安楽死が認められた後で、ある人が辛い病気で死を選んだとして、同じ症状、同じ境遇の人達がどんな気持ちになるかって考えると悲しいね。それは国がそのような人は死を選ぶ事が好ましいと暗に示してしまい兼ねない事になってしまうね。だからマー君の言う基本的人権の尊重の中の生存権がある限り、国が積極的安楽死を認めるという立場をとるのは難しいかもしれないね。

ディアボロ先生
ディアボロ先生

日本国憲法 第13条

第13条 すべて国民は,個人として尊重される。生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利については,公共の福祉に反しない限り,立法その他の国政の上で,最大の尊重を必要とする。

上記のように、憲法で国民は個人として尊重されるとしている。国は個人に対して最大限生きる事を尊重しなければならない。マー君やディアボロ先生が言うように、もし積極的安楽死を日本で認められるということになれば、その積極的安楽死を選択した個人の意思を尊重すると同時に、同じ境遇の人に対して生きるという選択に対する足枷(あしかせ)になってしまわないだろうか。憲法違反ではないかもしれないが、法律で安楽死を認めるということにはたくさんの弊害があるかもしれない。冒頭で問いかけたように、余命宣告されるような病気になり、身体的苦痛があり、体が不自由になる。またある程度年齢制限をかけるような、かなり限定的な状況のみなら認められるべきか。

続く・・・

西 友広
  • 西 友広
  • 趣味:映画鑑賞(ジャンル問わず)
       山登り