アメリカで黒人はなぜ差別されるの?①
アメリカで黒人は差別されているというニュースを見た事がある人は多いだろう。実際にどのような差別があるのか。そもそもなぜ差別されなければならないのか。日本に住んでいるとアメリカに住む黒人がどのように差別されているのかが分かりづらい。そんなアメリカ黒人差別を歴史を踏まえて一緒に見ていこう。
ディアボロ先生!アメリカで黒人の男の人が警察官に首を押さえつけられて苦しそうにしてるニュース見ちゃった!ひどい映像で僕ビックリしちゃった。その人はその後死んでしまったらしいんだ。
アメリカ中西部のミネソタ州で、黒人のジョージ・フロイドさんが警察官に首を押さえつけられて死亡した事件だね。
米国で白人警官が黒人男性の首押さえ死亡 差別への抗議活動が過激化
ひどい事件だけど、どうしてこの事件が差別への抗議につながるの?ジョージフロイドさんは黒人だから殺されたの?
そういう事になるだろうね。過去に警察官による黒人への不必要な暴行が多発していた。しかも、そういった事件が発覚したところで、警察官が刑事責任を問われる事は滅多になかった。
黒人を暴行しても逮捕されないの?
ロドニー・キング暴行事件で暴行警察官全員無罪
そうだね。黒人たちの、特に貧困層の不満が表面化した事件が1991年3月に発生したロドニー・キング暴行事件だ。黒人のロドニー・キングはスピード違反容疑で逮捕されて暴行された。その様子が撮影されていて、テレビで映像が配信されたんだ。そして、その暴行した警察官4人全員無罪となった事から暴動が起こったんだ。
ひどい!アメリカってそんな国だったの?でも暴動している黒人達も良くないと思うな〜。もっと暴力じゃない方法で訴えることは出来ないのかな?
マー君の意見も正しいと感じる人は多いだろうね。では、どうしてここまで暴徒化(ぼうとか:集団が暴行行為や破壊行為をはたらくようになるさま)してしまうのかを歴史を振り返りながら見ていこう。
黒人奴隷の歴史
16世紀後半からアメリカ大陸はイギリスの植民地になっていたんだ。そんな中、1619年8月にオランダの商人によって、黒人奴隷が輸入されたんだ。
人が輸入されるって嫌な話だね。どうして黒人奴隷を輸入したの?
白人農園経営者は一生涯強制的に働かせる事ができる黒人奴隷はお金が安く済むと考えたんだ。
でも、どうして白人は黒人を奴隷として扱ったの?同じ人間なのに。
実は黒人奴隷を手に入れる前は、貧しい白人を年季奉公(ねんきぼうこう:一定年の間、住み込みで家事、家業に従事すること)人として労働力にしていたんだ。だけど、それよりも奴隷の方がお金が安く済むし、一生涯強制労働させられるメリットがあった。
白人が白人を働かせていたんだね!だけど、一定の間という期限があったんだね。
そうだね。給与が出る場合もあったようだ。そして、黒人奴隷はヨーロッパとアフリカの奴隷貿易が始まりなんだ。ヨーロッパの国々では労働力が足りていなかった。ヨーロッパ側から武器をアフリカへ送り、武器を持った黒人が同じ黒人を襲い(奴隷狩り)、売り飛ばしていたんだ。
お金の為にそんな事をしていたんだね!アメリカに住む黒人たちはいつまで奴隷だったの?
奴隷制度廃止は1865年
アメリカで奴隷制度が廃止されたのは1865年。奴隷制度自体は約250年続いたんだよ。
250年も?そんな長く続いた奴隷制度はどうして1865年に廃止されたの?
1860年11月に奴隷制の拡大に反対する共和党のエイブラハム・リンカーン が大統領に当選したんだ。それを機に奴隷制を支持する南部の州(11州)がアメリカ合衆国から離脱して、アメリカ連合国を作った。そして1861年4月にアメリカで唯一の内戦である南北戦争が勃発したんだ。
どうして北部と南部で考え方に違いが出たの?
南部の中心産業は奴隷制による綿花栽培だったんだ。それに対して北部では商工業が発展してきていた。南部として大農園の維持には奴隷は必要だと考えて、北部では工場での労働などの労働力、そして購買力に期待していたんだ。他にも政治的にも対立する考え方があったようだね。
その後、奴隷制が廃止になったって事は、北部が勝利したんだよね?
その通りだね。戦争が激化する中、リンカーン は1863年1月1日に奴隷解放宣言を発布した。元々北軍が戦争を始めた理由は南部諸州が合衆国からの離脱を阻止する為だったんだけど、この宣言によって、奴隷解放が戦争の目的になったんだ。そのおかげで南部の奴隷達は主人の命令を拒んだり仕事を怠けたり脱走したりした。
戦争の目的が明確になったことで、奴隷達が北軍の見方になったんだね!
実際に奴隷達は北軍の兵士となって戦闘に加わっていったんだ。リンカーン の思惑通りになったんだ。そして、1865年12月6日に憲法修正第13条が批准・成立した事によって、奴隷制度は廃止され、アメリカ全土で奴隷制は禁止されることになったんだ。
憲法修正第13条
奴隷は、犯罪に対する刑罰として正式に有罪の宣告を受けた場合をのぞき、合衆国およびその管轄に属するいかなる地域にも存在してはならない。
じゃあ、それから黒人達は自由になったんだね!
残念ながらそう上手く話は進まないんだ。南部諸州では農業労働力不足を補う為に、黒人取締法を州法として制定した。これは黒人の強制的就業を前提として、黒人には農園の敷地内から許可なく出る事の禁止、飲酒の禁止、主人が黒人を鞭(むち)打つ事を許可するという非人道的な法律だったんだ。
ひどい!それって結局のところ奴隷制だよ!
その通り。南部諸州は事実上奴隷制を継続する為に州法を制定したんだ。だから、北部は怒り、連邦議会によって1866年3月に黒人に公民権を与える法律を制定した。
公民権(こうみんけん)・・・南北戦争以後アメリカにおいては,州法で黒人に与えられていない権利、および合衆国憲法上規定されていても実質的に黒人に保障されていない権利のこと。日本では単に選挙権や被選挙権を公民権と呼ぶ事がある。
1870年に批准された憲法修正第15条では、人種や肌の色、過去に奴隷であったことを理由に投票権を奪う事を禁じ、1875年の公民権法では、公共の場所での人種差別(人種分離)を禁止した。
わざわざそんな憲法や法律を作らないとダメなくらい人種差別がひどかったんだね。同じ人間なのに投票権もなかったんだ。
それくらいひどい時代だったんだ。憲法や法律が変更される事によって、黒人の生活は少しずつ改善されたとは言え、未だに黒人差別が続いている。この長い奴隷、差別の歴史を一つずつ紐解いて知っていく事で、今黒人たちがどれだけ辛い思いをしているかを理解できるようになるはずだよ。
次回は、ディアボロ先生が教えてくれるアメリカ黒人の歴史の続きですが、一点白人社会が憲法をすり抜けて黒人を奴隷にしていた問題について記しておきます。
憲法修正第13条を読み替えれば、「犯罪に対する刑罰として正式に有罪の宣告を受けた場合」は奴隷として扱う事を許すという内容です。
もちろん犯罪者は刑罰を受ける者なのですが、実は黒人は白人に比べてあまりにも軽微な罪で逮捕されます。そして逮捕された黒人たちは奴隷として扱っても良いと憲法修正第13条をを解釈し、アメリカ南部の発展のための労働力として利用されていた歴史があります。
奴隷制度は廃止されたものの、犯罪者制度として生まれ変わり、結局多くの黒人が奴隷として利用されていました。
現在でも、アメリカに住む黒人の多くは、夜中に外出する際は身なりを整えてから外出しなければなりません。そうでなければ警察官に職務質問されるからです。白人であればそのような事は少ないのですが、黒人であるという理由だけで職務質問される確率が上がります。
そもそも何故差別されるのか。奴隷として扱われる歴史を考えると、もしかすると支配者層の金が関わる思惑が発端として関係しているのかもしれません。