塩はどうやって作られる?
料理に必要な塩。日本は島国なので塩の生産は多いのではないかと思う人もいるかもしれないが、日本の塩の生産は少なく、多くを輸入に頼っている。塩は海水から作れるはずなのにどうして?そもそも塩ってどうやって作れる?そんな疑問の答えを一緒にみていこう。
ディアボロ先生!ファミレスでポテトフライ頼んだら塩をお好みでかけて下さいって言われたんだけど、この塩って海水から出来てるの?
マー君はクマなのにポテトフライも食べるんだね。その塩はマー君の言う通り海水から作られていると言って良いね。
作られていると言って良い?どうしてそんな言い方なの?
世界の塩生産の約3分の2は岩塩
世界の塩は約3分の2が岩塩から生産されているんだ。
岩塩って何?
岩塩とは、地殻変動(ちかくへんどう)によって海の一部が陸地に閉じ込められて、海水の塩分が結晶化して、その上に土などが堆積(たいせき:うず高く積み重なること)して形成されると考えられている。
陸地が移動して海水を陸地に閉じ込めて、その海水が塩の岩になったんだね!だから岩塩が僕たちが口にする塩だけど、それは元々海水が原料だから「海水から作られていると言って良い」ってことだったんだね!
そういう事だね。もちろん海水から直接塩を製造する方法もあるよ。
海水から塩を作る
海水から塩を作るには、蒸発させて残った塩を取り出せば完成?
海水には塩だけじゃなくて、砂や泥などの異物が混入しているから、蒸発させて塩だけを取り出す事はできない。だから、濾過(ろか:液体をこして異物を取り除く)する必要がある。
海水をお日様と風で乾燥させて塩を作って、それを溶かして濾過して、また沸騰させて塩の結晶を作るのか〜!時間がかかる作業だね〜!日本って海に囲まれてるから海水なんてどこでも手に入りそうだけど、塩は輸入しているの?
日本の塩の輸入率は87.2%(2020年度)で、ほとんど輸入に頼っているよ。
日本は塩の輸入国家
87.2%!?島国なのにどうしてそんなに輸入に頼っているの?
もちろん日本は島国だから塩の生産は可能だよ。だけど、大量の塩を生産しょうと思うと広大な土地と、何より乾燥した気候が必要なんだ。日本は雨が多く湿度も高く、広大な土地を確保するのが難しい。そういった点で輸入に頼らざるを得ないんだ。
せっかく島国なのにもったいないね!
もう一つ要因としては、元々塩の製塩は国の専売(せんばい:特定の者だけが独占販売すること)だったんだ。1971年(昭和46年)に「塩業近代化臨時措置法」が成立して塩田での製塩からイオン交換膜製塩法に全面的に切り替わった。この化学工業塩に対して疑問を持った人たちが、自然塩復活の為に運動を起こした結果、当時専売公社が輸入したメキシコとオーストラリアの天日塩田塩のみの使用許可が出たと言う経緯がある。
塩って国の専売だったんだ!じゃあ今でもメキシコとオーストラリアからの輸入が多いの?
その通り。平成30年の塩輸入割合はメキシコとオーストラリアで80%以上を占めている。
じゃあ塩の生産はメキシコとオーストラリアが多いんだね?
世界で一番塩を生産しているのは中国で、メキシコとオーストラリアを合わせても中国はそれの2倍以上の生産量がある。中国についでアメリカ、インド、ドイツ、そしてオーストラリア、メキシコという順番だね。
中国は色んな分野で一位になっているね〜!
塩は食べるだけじゃない?
ちなみに塩は食べるよりもソーダ工業として使用されている方が多くて、塩の消費量の約7割がソーダ工業用として使用されている。
食べるよりも多い!?ソーダ工業用って何?ソーダって炭酸水の?
飲むソーダとは別物だよ。塩を原料に、幅広い産業分野の原料、副原料、反応剤などに使われる化学薬品を製造する。例えば塩水を電気分解して製造する「苛性(かせい)ソーダ」(水酸化ナトリウム:NaOH)は石けん、各種ソーダ塩の製造、紙及びパルプの製造、酸の中和剤、油脂・ガスの精製、排水管クリーナーなど、様々な用途がある。
そういうものなんだ!飲んだらダメなものだね!塩からそんなものも作られるのか〜!
他にもたくさんの化学薬品を製造しているんだけど、苛性ソーダ水溶液に塩素ガスを吸収させて作られる次亜塩素塩素酸ナトリウム(NaClO)は消毒・殺菌などで様々なところで使われているから知っている人も多いだろうね。
そうなんだ!そういえば学校でノロウイルスが流行った時に次亜塩素酸ナトリウムで消毒してた気がする!
そうだね。そういったところでも使われているよ。
塩って料理だけじゃなくて、色んな用途があったんだね〜!
日本古来の製塩方法
日本は塩を輸入する前から塩は作っていたんだよね?どういう風に作っていたの?
古墳時代(3世紀半〜7世紀末頃)には藻塩焼きという手法が使われていたらしい。詳細は分かっていないけど、藻を積み重ねて海水をかけて「かん水(塩分濃度の高い塩水」を作り、それを煮詰めて塩を取り出すというような手法だったそうだ。
藻を使ってはいるけど、かん水を作ってから煮詰めて塩を取り出すのは今と一緒だね!
そうだね。まずは塩分濃度を高めてから煮詰めて塩を取り出すという点では他の手法も大体同じだと言えるね。例えば揚浜式塩田という手法は、1596年から行われているけど、これもかん水を作ってから煮詰めて塩を得る手順は同じ。ただし、藻を使わず砂浜の砂を利用してる点で違いがある。海水を撒いた砂を集めてかん水を作るというのはなかなか肉体を使う作業だね。
これは思いつかなかったよ〜!こんな手法があったんだね!
それから17世紀ごろ、入浜式塩田と言って、揚浜式塩田とは違って海水を汲み上げることはせず、塩の干満の差を利用して海水を引き入れて、毛細管現象によって砂を湿らせる方法が生まれたんだ。
毛細管現象・・・細い管を液体の中に入れると、液体の水平面よりも高くなったり低くなったりする現象。
力仕事が少し楽になったという点で進化しているね!それにしてもそんな昔から色んな科学的な現象を利用していたなんてすごいな〜!
1972年からはイオン交換膜と電気エネルギーを用いた製法で製塩する方法が利用され始めた。ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオンのような陽イオンのみを通す陽イオン交換膜と塩素イオン、硫酸イオンのような陰イオンのみを通す陰イオン交換膜を交互に並べた槽に海水を入れて、両側から電気を通すと、濃い海水と薄い海水を分けることが出来る。
かん水をイオン交換膜というものと電気を使って作るってことだね!なんか難しい話だけど。
これもかん水をどのように作るのかが違うだけで、結局のところかん水を作って沸騰させて塩を作るという点では、流れは同じだね。でも、利点としては広大な土地は必要ないし、雨の日も製塩に関係ない。
なるほど〜!少しずつ製塩方法も進化していっているんだね!僕が食べたポテトフライの塩はどうやって作られたんだろう。
そうやって調べてみるのも面白いだろうね。今製品化されている塩は安全なものがほとんどだろうけど、摂りすぎるのは体に良くないから、ポテトフライでも何でも食べ過ぎはダメだよ。