自動車運転過失致死傷罪って何?
「過失運転致死傷容疑などで逮捕」などという言葉をニュースや新聞で目にするが、これは自動車運転過失致死傷罪とはどういったものなのだろうか?過失とは?危険運転致死傷罪との違いは?わざと事故を起こした訳ではないのに、運転者が罰せられるのはどうして?など、さまざまな疑問を一緒に解決していこう。
ディアボロ先生!また自動車事故で人が亡くなったニュースを見たよ!僕もいつかは自動車を運転したいんだけど、僕も不注意で事故を起こしてしまわないか心配だな。
そういう風に心配している人は乱暴な運転をしないだろうから、事故を起こす確率は低くなるだろうね。だから自分も事故を起こすんじゃないかと思って慎重に運転する人が多くなるように、自動車教習所や免許の更新の時に色々教えてもらうんだよ。
乱暴な運転をしている人が事故を起こすのは自業自得だし、ちゃんと罪を償ってほしいなって思うけど、やっぱり不注意での事故で人を怪我させたりしてしまうのは悲しいし、運転してた人は罰せられるんだよね?
過失って何?
不注意であったり、アクセルとブレーキの踏み間違いなどの操作ミスでも罪に問われるよ。そういった罪を自動車運転過失致死傷罪という。
過失?
行為者が注意をすれば、その結果の発生を予見しえたのにもかかわらず、不注意によって事実を認識しなかった場合、これを過失と言うよ。
わざとじゃないけど責任はあるよっていう事だね?
そうだね。ざわとを別の言い方で「故意」と言うよ。故意ではない事故の場合、この自動車運転過失致死傷罪が認められるね。ただし、過失ではあったとしても、明らかに危険な運転であると認められる場合、「危険運転致死傷罪」という別の罪に問われるよ。
どういうのが危険な運転なの?
危険運転致死傷罪とは?
危険運転致死傷罪は下記の行為を行うことによって、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処するとされている。
1 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
2 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
3 その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
4 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
5 車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為
6 高速自動車国道(高速自動車国道法(昭和三十二年法律第七十九号)第四条第一項に規定する道路をいう。)又は自動車専用道路(道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第四十八条の四に規定する自動車専用道路をいう。)において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止又は徐行(自動車が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。)をさせる行為
7 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
8 通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
ん〜っと・・・。お酒飲んで運転したり、スピード違反したり、あおり運転したり、信号無視したり、車で走っちゃいけないところを走ったりして、事故を起こして誰かを怪我させたり死亡させてしまった場合に適応されるのが危険運転致死傷罪ってことだね?
そうだね。普通にルールを守って安全運転をしている人は、人身事故を起こしても、この危険運転致死傷罪に問われる事はまずないよ。
お酒を飲んで運転しちゃいけないってみんな知ってるしね!当たり前のことだよね!
ちなみに、飲酒運転をして事故を起こした人が、飲酒した事実を隠す為に、体からアルコールが抜けるまで事故現場から逃走するというケースも実際にある。
飲酒運転を隠すんだね!
そうなんだ。アルコールに限らず薬物もそうなんだけど、こういった事実の発覚を免(まぬが)れる為に現場から離れる行為をしたものに対しては、法律で12年以下の懲役に処するとしている。
そりゃそうだよね!だって、もし人をひいてしまって、飲酒運転だったからってその場から逃げてしまったら、ひかれた人を助けられないもんね!
それも大事な事だね。事故を起こしてしまった事実は消せないけど、被害者の命はその場での処置がものすごく重要。もしすぐに救急車を呼べれば助かる命もあるからね。
ひき逃げ死亡事故の検挙率は90%を超えている
ひき逃げをした人は、飲酒してたことを隠すためもあるだろうけど、捕まる事自体を避けようとするよねきっと。ひき逃げした人はちゃんと逮捕されているの?
ひき逃げをした人で、被害者が死亡したケースでは検挙率はおおむね90%を超えているよ。全体的にも検挙率は年々上昇している。
事故を起こしてしまったんだったら被害者の為に逃げないで応急処置とかして欲しいとは思うけど、加害者である自分も逃げても捕まるという事を知っていたら、逃げずに被害者を助けられるかもしれないね!
目撃者がもしいなかったとしても、人をはねてしまうと、車は損傷する。そうなると事故を起こした車だとすぐ分かるし、修理したとしてもその事実を操作でバレてしまう。上の検挙率を見てもらえれば明らかだね。マー君の言うように、逃げても無駄だし、何より被害者の救護を優先して欲しいね。
自動車運転過失致死傷罪の罰則
ところでディアボロ先生!危険運転致死傷罪じゃなくて自動車運転過失致死傷罪の罰則ってどんなの?危険運転致死傷罪よりも軽い罰則だとは思うんだけど、やっぱり相手が怪我したり死んでしまったりする事故だから、何もないって事はないもんね?
もちろん罰則はあるよ。
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(第五条)
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
危険運転致死傷罪に比べれば軽い罰則だけど、7年以下の懲役となっているから、決して軽い罰則という訳じゃないね!
過失運転致死罪の求刑は一般的に、長くても禁錮3年~5年程度が多いよ。加害者(事故を起こした人)がそれまでに罪を犯したことがない(初犯)の場合は、刑が軽くなるようだ。
故意でなかったとしても、自動車を運転するときは危険が伴うってことをしっかり考えておかないといけないね!
もし、あなたが自分の傘だと思って持って帰ったが、実は他人の物だったとしよう。その場合、あなたは法律上制裁を受けなければならないのだろうか?
ほとんどの場合、うっかり間違えたという事を認めて、その傘を返せば制裁を受ける事はない。もし、その傘を壊してしまったのなら、その傘を弁償するだけで済むだろう。
なのに何故、自動車運転での過失には制裁が必要なのか。それは、人の命や健康は重大な利益であると捉えられており、その重大な利益に対して尊重感情を維持し、人々の命や健康を害されないようにしなければならないと考えられているからだ。
物であれば弁償すれば済むかもしれないが、命や健康は取り返しがつかない場合がほとんどだ。であるから、もし過失であったとしても、制裁が必要だと言う訳だ。だから、自動車運転にはそれだけ十分な配慮が必要だと言える。
自動車事故を起こした人が、気が動転してその場から逃げてしまうことがあるが、それはあまりにも身勝手な行動である。道路交通法には事故を起こしたものは警察に事故を報告する「報告義務」と、人を死傷させた場合には負傷者を救護する「救護義務」がある。その場から立ち去るという事は、これらの違反として刑罰の対象となる。
そもそも、そういった法律上の問題以前に、自分の責任において招いた問題を放置してその場から逃げてはいけない。
気が動転してしまうのは理解できるが、普段から事故を起こしてしまうかもしれないという意識をどこかに持ち、もし事故を起こした時にはどのように対処するかを考えておいた方が良いだろう。
過失による事故は誰にでも起こる可能性がある。それは、自分がどれだけ注意していると思っていたとしても。