世界最古の法?「ハンムラビ法典」とは
私たち日本人は、法治国家である日本で生活している。法律という強制力が、私たちを縛ることで社会秩序が保たれていると言っても過言ではないだろう。そんな強制力を持った法律の始まりはいつなのか?その頃の法律はどうだったのか?そんな時代の法律を見ると、昔の人が考えが見えてくるかもしれません。
ディアボロ先生!世界で一番古い法律を勉強しようと思ってスマホで検索してたんだけど、「ハンムラビ法典」っていうのが出てきたんだ!「ハンムラビ法典」が世界最古の法なの?
確かに「ハンムラビ法典」はものすごく古いものだけど、世界で一番古い法典は「ウル・ナンム法典(ウル・ナンムの治世は前2112年〜前2095年)」だよ。
そうなんだ!それにハンムラビもウル・ナンムも人の名前なんだね!
その国を納めていた王様の名前だね。
法典古い順
「ウル・ナンム法典」(前2100年頃)
「リピト・イシュタルト法典」(前1930年頃)
「エシュヌンナ法典」(ハンムラビ法典の数十年前頃)
「ハンムラビ法典」(前1700年前半頃)
ハンムラビ法典って有名みたいだけど、その他も全然知らないな〜!
ハンムラビ法典が発見された頃、これは世界最古の法典だと沸(わ)いたんだよ。1901年〜1902年の発掘シーズンにフランスの考古学調査隊がハンムラビ法典が刻まれた石碑(せきひ)を発見したんだ。この法典碑は玄武石で出来ていて、高さが2.25mもある。
今から3800年くらい前のものが残ってるってすごいね!
そうだね。でも、後にハンムラビ法典は世界最古の法典でないと判明する。だけど、法典そのものが、ほとんど完全な形のまま残っているのはハンムラビ法典だけなんだ。だからこそ重要だと言えるね。
目には目を!歯には歯を!
ハンムラビ法典の中にはどんな法律が書かれていたの?
ハンムラビ法典は実際のところ法律というよりも、判決集と言った方が良いんだ。色んな判決が過去にあって、それをまとめたものと言えるね。ただ、実際に判決を受けた人の名前などは消されて一般化されたものだね。
そーなんだ!例えばどんな判決があったの?
マー君は「目には目を、歯には歯を」という言葉は知っているかな?
聞いたことあるよ!意味は知らないけど。
「やられたら同じ事をやり返す」という意味で今でも使われる言葉だけど、ハンムラビ法典にすでに記載されているんだ。
第196条 もしアヴィールムがアヴィールム仲間の目を損なったなら、彼は彼の目を損なわなければならない。
第200条 もしアヴィールムがアヴィールム仲間の歯を折ったなら、彼は彼の歯を折らなければならない。
アヴィールムとは上層市民を意味します。当時は上層市民、一般市民、奴隷と身分が分かれていたようです。上層市民が上層市民に対して怪我を負わせた場合、加害者は同等の怪我を負うものとされたが、上層市民が一般市民に怪我を負わせた場合、銀を支払う事で罪を償うとされています。また、奴隷に対しては奴隷の価値の半額を支払うとされていたりするのを見ると、当時の奴隷がどのように売買されていたのかを想像させられます。今の日本では考えられないことかもしれません。
やられたらやり返すか〜!それってちょっと怖い気がするな〜!気持ちはわかるんだけど。
今の日本でも「死をもって罪を償え」という言葉があるように、殺人をした人は自分の命を差し出せという感覚を持つ人もいる。死刑賛成派の意見だね。
やっぱり僕はなんか違和感があるな〜。復讐を国が許すのは。
確かに復讐だね。ただ、復讐をするにしても、同等の怪我で終わらせるという「
やりすぎ」を防ぐ意味があったとされているね。
なるほど〜。銀の支払いで問題を解決するところは今の日本と同じ感じがするね!
そうだね。当時の賠償金(ばいしょうきん)という考え方は今でも活かされているだろうね。
被害者救済を求める画期的なハンムラビ法典
ハンムラビ法典面白いね!他にはどんな事が書かれているの?
面白いところで言えば、被害者救済の考え方だね。ハンムラビ法典によると、もし事件が起きて、犯人が捕まらなかった場合、被害者まはた被害者遺族に対して市長が損害の補償をしなければならないとされているよ。
すごい!被害者や遺族にとっては嬉しい法律だね!大昔にこんな考え方があったなんて驚きだよ!日本にはこんな制度ってあるの?
「犯罪被害給付制度」というのがあるよ。これはハンムラビ法典のように、犯人が見つからない場合でも、仮給付金を受け取ることも出来る。
知らなかったな〜!ちゃんとそういう制度ってあるんだね!
ハンムラビ法典には「医療過誤」「製造物責任」についても書かれている。日本ではより具体的に法制化されましたが、紀元前1700年前半頃にすでに判例があり、法律として機能していたと考えると驚きです。
「目には目を、歯には歯を」という復讐法は残酷ではありますが、現在の日本でもその考えを持っている人も多いのではないでしょうか。
私は死刑に反対の立場をとります。それは、人は人を殺してはいけないという考えがあり、それは殺人犯に対しても同様であるという考えを持っているからです。一見矛盾しているかもしれませんが、殺人犯を殺す者もまた人間であり、新たな殺人を生み出すという考えがあります。
目には目をという考え方は過激な復讐の抑止と見れるとするならば、殺人はこれ以上ない過激なものだと思います。
死刑が殺人の抑止にならないのは、大量殺人を犯したものの「誰でも良かった。死刑になりたかった。」という言葉から推察できます。
私たちは、昔の法律もよく出来ているなと感心するだけでなく、今の法律もよりよくするにはどうするべきかを考える必要があるでしょう。