マシュマロ実験とその後の研究
マシュマロ実験とは、子どもの自制心とその後の社会的地位との関係を明らかにした実験です。しかし、その後の実験でマシュマロ実験の結果を覆すことになります。では、マシュマロ実験の結果は意味がないものなのでしょうか?実験結果はどのように使うかが大切です。どう使うのかを考える為にどう捉えるかを一緒に考えよう。
ディアボロ先生!マシュマロ実験ってどんな実験?
スタンフォード大学の心理学者・ウォルター・ミシェルが1960年代後半から1970年代前半にかけて実施した、子どもの自制心と将来の社会的成果の関連性を調査した著名な実験だよ。もともとは、幼児期における発達を調査するためであったんだけど、その後の追跡調査によって、大学進学適性試験(SAT)の点数が自制心のある子どもだった群はトータルスコアで210点も高かったことが判明した。その為、幼児期の自制心の高さは幼児期のIQより、将来のSATの点数にはるかに大きく影響すると結論した。さらにその後も追跡調査が行われ、この傾向はその後も継続していることが明らかになったんだ。
IQより自制心の高さがテストの点数に関係するのか!なんとなくそれは分かる気がするな〜!だって勉強するのって集中力いるし、学校の勉強はやるけど、家での勉強って自分でどれだけ自分をやる気にさせるかが大切だもんね!
そうだね。学力に関しては興味や関心といった他の要素も関係するからそれだけが大事だとは言えないだろうけど、自制心の高い子どもの方が安定して学力を維持できるのは理解しやすいよね。
実際にどんな方法で自制心をテストしたの?
マシュマロ実験の方法
4歳の子ども186人が実験の対象者に選ばれて、被験者である子どもは、気が散るようなもの(おもちゃなど)が何もない机と椅子だけの部屋に入れられ、椅子に座るよう言われる。机の上には皿があり、マシュマロが一個置かれている。実験者は「私は用事があるから15分部屋を空けるよ。15分後に帰ってくるまで、マシュマロを食べずにいれたら、あとでもう一個マシュマロをあげるよ。」と言って部屋を出ていく。そして、その間の子どもたちの様子を観察し、我慢した子どもがどれくらいいたかを確認するという内容だね。
15分か〜。我慢できそうだけど、4歳児だもんな〜。
じゃあ実際の実験の雰囲気がどんな感じか一緒に見てみよう。
The Marshmallow Test | Igniter Media | Church Video
やっぱりマシュマロばっかり見ちゃうよね!15分なんてあっという間っていう風には思えないだろうね!実際にどれくらいの子どもがマシュマロを食べずに我慢できたの?
3分の1程度の子どもしか我慢できなかった
マシュマロを食べずに我慢して、あとでもう一個もらえたのは全体の3分の1程度しかいなかったようだよ。
半分以下なんだね!じゃあこの3分の1の子どもたちが、その後の学力テストの結果が良かったんだね!
そういう事だね。だけど、2018年5月25日にマシュマロ実験を再現したニューヨーク大学のテイラー・ワッツ、カリフォルニア大学アーバイン校のグレッグ・ダンカンとホアナン・カーンは、マシュマロ実験の結果は限定的とする実験結果を発表した。
限定的?どういう意味?
マシュマロ実験の再現で分かったこと
彼らの実験では被験者の数を900人以上に増やして行った。被験者の家庭の年収も合わせて調査をしていた。その実験の結果では、被験者の経済的背景と相関(そうかん:二つのものの関連があること)が高く、長期的成功の要因としては被験者が経済的に恵まれていたかどうかの方が重要であったことが分かったんだ。
そういう傾向があるという事だね。
どうして?
この実験で言われていることは、裕福な家庭の子どもは毎日食事にありつけるという事が当たり前で、経済的な面で親との約束は守られるものというのが前提としてあるけど、貧困な家庭の子どもの場合、経済的な理由でそれらが守られないかん環境にある可能性がある。
じゃあマシュマロを2つ目がもらえるって思ってる子どもたちと、2つ目は本当はもらえないんじゃないかって考える子どもたちがいるって事だね?
そうだね。裕福な家庭の子どもは比較的安心して喜びを先延ばしに出来るけど、貧困な家庭の子どもには、その安心感がないから、我慢するメリットがないと感じているのかもしれないね。
お金持ちだから良い教育を受けられるという理由じゃないんだね!
それもあると思うよ。これだけが原因だとは言えないものだからね。
この2回目のマシュマロ実験は、はじめの実験結果を否定しているの?
実験結果をどう理解するか?
否定している訳ではないよ。1回目の実験で分かった子どもの「自制心」がその後の学力に影響するというのは相関するけど、その「自制心」とは被験者の家庭の年収によって左右されるという事が2回目の実験で分かった。
自制心がどういう理由で強いのかが実験で分かったって事だね!
そういう事だね。だけど、これは家庭の環境に左右されるというのが分かったんだけど、環境はお金の問題だけじゃないよね。だから、これも大きい視点で見れば限定的な結果と言わざるを得ない。全ての裕福な家庭に生まれた子どもが学力が高くなる訳じゃないし、全ての貧困な家庭に生まれた子どもの学力が低くなる訳でもない。相関とは影響しあうという事だけど、結果が全て単一(たんいつ:一つまたは一人だけ)になる訳ではないというだけは忘れてはいけないよ。
そうだよね!いろんなものの関わりによって変わるものもたくさんあるもんね!じゃあこれらの実験で自制心を作り出すのに必要なのは、我慢したら良い結果が待ってるよっていうことを子どもに教える事が出来たら、努力して勉強を続けられるようになるかもしれない。そうなったら学力も上がるかもしれないって事だね!
そうだね。我慢したら良い結果があるよっていう体験を積み重ねる事が大切なんだろうね。もし我慢しても意味がないと認識してしまうと、すぐ目の前の結果にしか目がいかなくなってしまうかもしれないね。
我慢したら良い結果が得られる体験の積み重ねだね!喜びの先延ばしが安心して自然と出来るようになるんだろうね!