女性のヒールは必須?
ビジネスの現場では、男性、女性共にスーツの着用は必須な会社がほとんど。髭(ひげ)は剃り、前髪は額にかからないように整え清潔感を出す。しかし、女性のヒールは清潔感とは違うのではないか。ファッションの強要とは一体何なのか。
ディアボロ先生!スーツを着た女の人ってヒールを履いてるよね?男の人は履かなくて良いの?
男の人は履かなくても良いみたいだね。女性も履かなくて良い会社もあるけど、そんな会社でもヒールを履くことが一般的になっていたりする。女性はヒール着用を強制される会社もあるよ。
そうなんだ。男の人の革靴でも長い時間歩くのしんどそうなのに、ハイヒールなんてとてもじゃないよね。そもそもヒールって何の為にあるの?
ハイヒールは汚物から洋服を守る為に出来た説
16世紀のヨーロッパでは、街中が汚物やゴミがいっぱいで汚かったらしいんだ。普通の靴だったらスカートの裾(すそ)やズボンの裾が汚れてしまうから、踵(かかと)側に高さをつけたハイヒールが汚れから洋服を守られるという事で作られたと言われているよ。
ウ○チから洋服を守る為!?それだったら街を綺麗にすることを先に考えないといけないんじゃない?
それもそうだね。ただすぐに解決する方法がハイヒールだったんだろうね。
ひえ〜!今の時代に生まれて良かったよ〜!でもそれじゃ、男の人もハイヒールを履いてたって事?
ハイヒールは格好良く見せる為の男性用説
ハイヒールは元々男性用だったという説もあるんだよ。舞台役者なんかが背を高く見せようとして履いてたって話もある。ルイ14世もヒールを履いていて、それがルイヒールと言って人気だったそうだよ。
男の人も履いてたんだ!意外だな!それじゃあね、何で今は女の人だけがヒールを履いているの?
機能性を求めて革靴やブーツが主流になったと言われている。結局ファッションだから流行があるんだろね。
今は女の人の中にだけヒールのファッションが残ったんだね。そう考えたら、ファッションなんだから自由で良いんじゃないかな?
国会でも取り上げられるヒール問題
そう考えている人が増えているみたいだね。国会でもヒール着用はパワハラになるのでは?という質問が出て、その質問に対する厚労相の回答は、「足をケガした労働者に必要もなく着用を強制する場合などはパワハラに該当し得ると考えております。」だったんだ。それはそうだよね。だけど、「当該指示が社会通念(つうねん)に照らして業務上必要かつ相当な範囲を超えているかどうか、これがポイントだと思います。」とも答えている訳。
社会通念って何?
社会通念とは社会一般に通用している常識のことだね。質問に対する答えから考えれば、要は常識的に仕事で必要な範囲を超えていなければ、強制はOKと言ってるんだね。
常識って分からないな〜。僕は女性がヒールを履かなくて良いと思ってるけど、それは常識がないって言われてるみたいだよ。
そう捉える人もいるかもしれないね。そもそもその常識を問う質問を国会でしている訳だから、社会通念に照らすという発言は先生も理解できていないよ。
結局、それぞれの企業で働く人たちが反対なり行動を起こさないと変わらないってこと?
そうだろうね。でも、苦痛や不満をSNSなんかで訴えている人は多いけど、実際企業に直接反対を訴える日本人はほとんどいないみたい。
どうして?
職場で居場所を失ったり、仕事自体を失うことを恐れているらしい。文句はあっても、それを言い出すと会社から報復(ほうふく:仕返しされること)されたり、恐ろしいことに、仲間からも除け者にされるかもしれないと思ってる。実際そうなるかもしれない。基本的にはルールは守るものという考えが多くの人の中にあるし、それを理解した上で就職したんでしょっていう考え方が根強いからね。
一人で言い出してもダメそうだね。他の国も同じような状況なの?
イギリスで話題になったヒール問題
2015年にイギリスの企業で働く女性が、ヒールじゃなくて普通のフラットの靴を履いて行ったら、帰宅させられたっていうことがあった。その会社では「高さ5センチから10センチのハイヒール」を履くようにと指示されていたんだ。彼女は日給ももらえず帰宅させられた。彼女は女性が職場でハイヒール着用を強制されないように法改正を求めて、賛同する1万人以上が署名している。
そんなにたくさんの人が賛同しているんだね。やっぱりみんな嫌なんだね!
彼女は9時間の勤務で、依頼人を会議室に案内する仕事だったんだけど、そんな長時間ハイヒールで働くのは無理だと訴えた。それを男性にも強制するのかと上司に問うと笑われたらしい。これは性差別とも捉えられる訳だね。
ヒールは清潔感という身だしなみを整える行為とは別
そうだよね。ファッションの強要は女性を見世物にしていると思われても仕方ないよね。
そうだね。男性の場合は清潔感として身だしなみを問題にされるけど、ヒールは清潔感とは違う。女性蔑視(べっし:あなどること。さげすむこと。)と捉えられても仕方ないかもしれない問題だね。
ヒールとパンプスの違い
ここで基礎知識として、ヒールとパンプスの違いを説明しておきます。パンプスとは靴の種類を言い、ヒールは種類を表すものではありません。パンプスとは、足の甲部分が大きく開いており、靴紐や留め具がないものを言います。なので、よく目にするハイヒールもパンプスという種類に属することになります。ヒールとは高さを表す時に使うので、ハイヒール、ミドルヒール、ローヒールなんて言い方をします。ハイヒールは大体かかとの高さが7㎝以上のものを言います。ちなみにかかとの高さが7㎝以上のものであれば、ブーツやサンダルでもハイヒールです。
ヒール問題を抽象化して考える
学校の制服なども決まりがありますが、そういった決まり事は、初め必要とされる意味があったから生まれた。しかし、時代と共にその意味がなくなり形骸化(けいがいか:形ばかりのものになってしまうこと)しているものは他にもあります。それを伝統だとか風習だとか常識だという言葉で意味あるものと思わせるという事は少なくないと感じています。その時代のニーズによって変わるべきものは変わらなければならないし、変えてはいけないものは変えてはいけない理由をしっかり伝承していく必要があると思います。そうでなければ、意味もないものに縛られ苦悩を抱える人が増え、解決策は常識などという言葉で抹殺されてしまう。常識は多数の認識が作り出すものであり、それは実際にその苦悩を経験したことがない人たちが多数として、過去を精査せずそのまま受け入れ認識し続けるだけということが往々にしてあるのではないだろうか。他人の苦悩を自分の苦悩のように感じられる人が少なければ、このヒール問題だけでなく、ほとんど全ての問題が自分には関係ない話、実感の沸かない話として抹殺され、それはいつか自らが問題に直面した際にもどうしようもない問題として降りかかってくるのだ。私たち一人一人が社会の問題に対して、自らの問題のように捉え考える姿勢を持つことが、社会人、集団の中の一員としての責任であります。行動を起こす起こさないという話以前に、まずは考えてみるという思考を持てる人が増える事を願っています。